競馬学校の厩務員課程には、騎手課程以上ともいえる難しいハードルが設けられています。
ポイントになるのは、応募の時点、すなわち入学前に「乗馬経験並びに牧場実務経験」が要求される点です。具体的には「乗馬経験は6ヶ月以上、牧場での競走馬・育成馬騎乗経験についても6ヶ月以上、双方の合計で3年以上の経験」というのが条件になっています。
この条件は「学校で馬術部にいました」とか、「乗馬クラブに通っています」という程度では、クリアすることができないものです。ですから、競馬学校の厩務員課程に合格するには、実際に入学願書を出すまでに既に勝負がはじまると考えるべきです。
最低3年間という乗馬・牧場経験としっかりした基礎を習得できる環境(学校)選びができたかできないかで、大きく差がつくことになります。
厩務員課程の入学試験は、「第1次試験」と「第2次試験」から行われます。受験倍率は10倍以上の難関だといわれています。
試験の募集は大体、3月中旬か9月中旬に行なわれます。
10月生・翌1月生を募集
翌4月生・翌7月生を募集
具体的な募集期間は年によって変わり、発表は競馬学校のホームページで行なわれます。受験を希望する人は、早めに確認するようにしましょう。
以下、募集開始から合格発表までの大まかな流れです。
↓約3週間後
↓約3週間後
↓約1カ月後
↓約1カ月後
1次試験では、最初に体重測定が行なわれます(体重60kgを越えると、以降の受験ができない場合もあるようですので、くれぐれも注意しましょう)。
体重測定に続いては、筆記試験〔一般教養(国語・社会・その他)、競馬一般〕。作文、身体計測、運動機能検査などが行なわれます。この1次試験の通過者が、「第2次試験」に進みます。
具体的な内容として、「身体検査」「運動機能検査」「学科試験」から成ります。「身体検査」や「運動機能検査」では、厩舎での業務を支障なく行なえる健康状態にあるかどうかを確認。特に重要視されるのが体重で、60kg以下が基準となります。
晴れて厩務員課程に合格した暁には、原則として週に1度の検量が義務付けられます。騎手ではないとはいえ、厩務員も馬の調教を行なう際には騎乗します。適切に調教を行なうためには、ウエイトコントロールは避けて通れない道なのです。そのため、普段から食事の調整やトレーニングといった習慣を身に着けておくといいでしょう。
なお、厩務員の仕事は午前5時半ごろから始まります。担当馬の調子の確認から馬房の掃除、調教、調教後の馬の世話など、午後5時ごろまで作業が続きます。休憩はありますが、このような業務を行なうためには、ある程度の体力と運動機能が備わっている必要があります。
「学科試験」は、「漢字の読み書き」や「社会」といった一般教養、競馬に対する一般知識などを問う「筆記試験」となります。一般教養は、中学校卒業以上か同等以上の学力があるかどうかを問うレベル。競馬の一般知識に関しては、各競馬場の基礎知識(左回りか右回りかなど)や、過去のレースで勝利した騎手と競走馬について述べよ、といった問題が出されます。そのため、日ごろから競馬全般やレースについて関心を持ち、学んでおかなければいけないでしょう。
また、第1次試験の会場は次の3カ所になります。
合否発表は受験者に通知されますが、栗東と美浦の両トレーニング・センターでも合格者の発表(受験番号のみ)が行なわれます。
2次試験では、再び体重測定が行なわれ、面接や健康診断、各種検査を受けることになるわけですが、何と言っても「第2次試験」のハイライトは、「騎乗適性検査」でしょう。乗馬・牧場の実務経験者を対象としていますから、騎乗技術についてはかなりの厳しい審査が行なわれます。
この2次試験をクリアして、厩務員課程に入学することができるのは、一回につき15名程度。近年の倍率は、10倍を超えるといわれていますから、相当の難関であることは覚悟してください。
期間は2日間で、2班に分けて実施。会場は、日本中央競馬会 競馬学校です。
試験の前に注意しなければならないのが、新たな健康診断書の提出。出願の際にも健康診断書を提出しますが、第2次試験の健康診断とは検査項目が異なります。そのため、すべての受験者が事前に受診し、試験当日に健康診断書を提出する必要があります。この提出を怠ると、その時点で不合格が決定。第2次試験用の健康診断については、第1次試験の合格通知と一緒に通知されるため、必ず目を通すようにしましょう。
第2次試験の内容は、「身体検査」「騎乗適性検査」「本人面接」です。
「身体検査」については、第1次試験と同様の形になります。そして、第2次試験で特に重要となるのが、「騎乗適性検査」。この検査で上位の成績を修めなければ、最後の「本人面接」を受けることができません。つまり、「騎乗適性検査」を制する者のみが、最終ステージへの切符を手に入れることができるのです。
「騎乗適性検査」とは、基本的な乗馬ができるかどうかを問う検査です。たとえ、豊富な乗馬経験があったとしても、基本を軽視した騎乗法を行なった場合、不合格となる可能性があります。例として挙げられるのが、モンキー乗り。鐙を短くして騎乗する騎乗法で、プライベートでは自由ですが、試験の際は封印した方がよいでしょう。試験対策として、事前のトレーニングは欠かせません。基本となる乗馬姿勢をきっちり体に染み込ませましょう。一朝一夕では難しいことです。早めに対策を行なうこと、それが通過への第一歩です。
「騎乗適性検査」を通過したら、いよいよ「本人面接」です。重要視されるのは、出願時の願書に偽りがないかどうか。書かれている内容の根拠付けや志望動機などが問われることでしょう。落ち着いて元気よくはっきりと。誠意をもって臨むことが大切です。
合否発表は、「騎乗適性検査」の不合格者を含むすべての受験者に通知されます。また、第1次試験の時と同様に、栗東と美浦の両トレーニング・センターでも合格者の発表(受験番号のみ)が行なわれます。
過去問題については、競馬学校から購入できます。過去5年間分をまとめて入手できるため、傾向と対策をしっかりと練ることができます。希望者は競馬学校のホームページをチェックしてみてください。
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