競馬学校で6ヶ月を過ごし、厩務員課程を無事卒業!といっても、自動的に厩務員の仕事に就けるわけではありません。
卒業生が厩務員になるためには、どのようなステップを踏む必要があるのでしょうか。JRA(中央競馬)、NAR(地方競馬)、それぞれのケースを見ていきましょう。
JRA(日本中央競馬会)の厩務員としてデビューするためには、日本調教師会が実施する採用試験を受ける必要があります。そして、採用試験に合格すると、「厩舎の経営者、つまり調教師個人と雇用契約を結ぶ」という制度になっています。
JRA競馬学校の厩務員課程の卒業生すべてに対して採用枠があらかじめ用意されているわけではないのが厄介なところです。厩舎によって仕事内容や労働条件に違いがあり、人気の厩舎に厩務員として採用してもらうためには、実力や運、時にはコネクションが必要なります。
厩務員として働くには、JRAの厩務員以外にも、NAR(地方競馬)の厩務員を目指すという道もあります。NARの厩務員になる場合は、JAR厩務員の競馬学校や採用試験に相当する定められたステップやルートはありません。
地方競馬の調教師と雇用契約(雇ってあげるという約束)を結び、各地方競馬より認定を受けることができれば即座にデビューすることができます。逆にいうと、調教師とのコネや人脈が重要なポイントになるとも言えます。
厩務員の就業者数を見るとJRAよりもNARで働く厩務員のほうが多いことがわかります。つまり明らかにNARのほうが受け皿は大きいのです。仕事内容については中央競馬の厩務員と大きな変化はありませんから、厩務員課程を卒業した後の状況によっては、検討してみるとよいでしょう。
厩務員として経験を積んだ後、さらなるキャリアアップとして目指すことができるのが「調教助手」です。調教助手は、厩務員としての基礎的な馬の世話や管理に加えて、調教師の指示のもと、実際に馬に騎乗して調教を行う重要な役割を担います。調教助手になるには、まず厩務員として確かな実績を積み、馬の状態を的確に把握できる技術や、調教師やチームとの信頼関係を築くことが不可欠です。
昇進には明確な試験制度があるわけではなく、多くの場合、厩舎内での実力・評価・日頃の働きぶりが大きな決め手となります。また、調教師からの推薦や厩舎内での人間関係も少なからず影響します。厩務員としての実務経験が2年以上求められることが一般的ですが、競馬学校時代の成績や厩舎の状況によっては例外もあります。
調教助手へのステップアップを目指すには、日々の業務を丁寧に積み重ねることが欠かせません。毎日の厩舎作業の中で馬との信頼関係を深め、調教師や先輩助手から学び続ける姿勢が重要です。また、調教助手になることで、より競走馬の育成やレース戦略の一端を担えるようになり、やりがいや責任感も大きく広がります。
調教助手として実績を積むと、さらにその先には「調教師補佐」や「調教師」といった上位職への道が開かれます。調教師補佐は、主に調教師の業務をサポートし、厩舎運営や競走馬の調教計画の策定、スタッフの指導など、より管理・運営的な役割が増えます。調教助手としての幅広い経験や信頼が、調教師補佐へのステップアップのカギとなります。
調教師になるには、JRAが実施する調教師免許試験に合格する必要があります。この試験は、馬の知識だけでなく経営やマネジメントに関する知識も問われるため、現場での実務経験に加え、座学での学び直しや試験対策が重要となります。また、調教師として独立するには、厩舎経営のノウハウやスタッフをまとめるリーダーシップも欠かせません。
競馬業界には、厩務員や調教助手、調教師以外にも多彩な職種が存在しています。たとえば、厩務員としての経験を活かして、装蹄師や装具管理、競馬場の運営スタッフ、獣医師補助といった職種へ転身するケースも見られます。馬の飼料や器具を扱う企業、馬関連メディアや競馬教育に関わる道も、経験者ならではの強みを発揮できる分野です。
また、NAR(地方競馬)での厩務員やスタッフ、育成牧場での仕事も選択肢となります。地方競馬や牧場では、馬の世話だけでなく、より幅広い業務を任されることが多いため、厩務員としてのスキルや柔軟性が重視されます。厩務員からスタートし、経験を積むことで競馬業界のさまざまな職種へステップアップすることができ、自分の適性や興味に合ったキャリア形成が可能です。
厩務員としてのキャリアを経た後、次のステップとして人気が高いのが牧場スタッフへの転身です。特に生産牧場や育成牧場では、馬の出産や育成、馴致、調教といった幅広い業務が行われています。ここでは、厩務員時代に培った馬の取り扱いスキルや健康管理の知識がそのまま活かせるため、即戦力として歓迎されるケースが多く見られます。
牧場での仕事は、競走馬の未来を支えるという大きなやりがいがある一方で、体力面での負担も決して小さくありません。早朝や夜間の作業、季節による業務の変動もあります。そのため、牧場への転身を考える際は、自身の体調管理や生活リズムの見直しも重要なポイントとなります。また、近年は研修プログラムや専門校を経由した就職ルートも整備されており、未経験からでも段階的に現場で学ぶことができるようになっています。
競馬業界で培った馬の知識や経験を、乗馬クラブや馬術クラブで活かす道もあります。乗馬クラブでは、一般の乗馬愛好家や初心者に馬とふれあう楽しさや乗馬技術を指導する役割が中心となります。厩務員として馬の性格や扱い方を熟知していることは、指導員としての大きな強みになります。
また、近年は子ども向けや高齢者向けの乗馬教室など、幅広い世代に向けた乗馬サービスが増えているため、コミュニケーション力や指導スキルがいっそう重視されています。乗馬クラブでの仕事は、競走馬の世界とは異なるやりがいや喜びがあり、馬とのふれあいを一般社会に広める社会的意義も感じられるでしょう。
厩務員経験者は、畜産業界や馬関連企業などで新たなキャリアを築くこともできます。たとえば、飼料メーカーや馬具メーカー、動物病院や馬運車会社など、馬に関する知識や現場経験が評価される職場が多く存在します。また、馬産地での観光業や体験型施設のスタッフとして活躍するケースもあります。
こうした分野では、馬の専門知識だけでなく、社会人としての一般的なビジネスマナーや事務スキルも必要となるため、キャリアチェンジの際には新たな学び直しも視野に入れるとよいでしょう。これまでの経験と新たなスキルを掛け合わせることで、競馬業界の枠を超えたキャリア形成も十分可能です。
厩務員として得た経験や知識は、教育や専門職の分野でも活かすことができます。たとえば、競馬学校や専門学校の講師として、これから馬業界を目指す若者に自身の経験を伝える道があります。こうした教育現場では、実践的な指導力やコミュニケーション能力が特に重視されます。
また、装蹄師や馬の飼料開発などの専門職も選択肢のひとつです。装蹄師は資格や専門的なトレーニングが必要ですが、現場での経験が大いに活きる職種です。ほかにも、馬に関わるイベント企画や競馬関連メディアでの情報発信など、多彩な道が広がっています。
厩務員として積み重ねてきた知識や人脈は、さまざまな分野で価値ある財産となります。セカンドキャリアを考える際には、これまでの経験を最大限に活かし、自分に合った新たな挑戦を見つけていくことが大切です。
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