競走馬など、とてもデリケートな馬を専門に運ぶ「馬運車(ばうんしゃ)」。 その運転手は、日本の競馬や馬術文化を陰で支える重要な仕事です。
この記事では、馬運車の運転手になるための具体的な方法や必要な資格、詳しい仕事内容について、分かりやすく解説していきます。
馬運車の運転手は、単に「荷物を運ぶ」ドライバーとは大きく異なります。 彼らが運ぶのは、高価であると同時に非常にデリケートな「馬」という命です。馬運車の車内は馬が快適に過ごせるよう工夫されています。
運転手の最大のミッションは馬にストレスを与えず、安全かつ快適に目的地へ届けることです。 輸送先は競馬場・トレーニングセンター・牧場、時には空港など多岐にわたります。単なる運転技術だけでなく、馬への深い配慮が求められる専門職であり、日本の競馬産業や馬術文化を物流面から支える、責任の重い仕事と言えるでしょう。
馬運車の運転手は、運転以外にもさまざまな業務を担当します。
馬という命を乗せるため、車両の点検は一般的なトラック以上に厳重に行われます。特にブレーキや、揺れを抑えるサスペンション(衝撃を和らげる装置)などの入念なチェックが必要です。
また、馬が過ごす車内(馬房)の衛生管理も欠かせません。輸送が終わるたびに車内を清掃し、消毒作業を行い、常に清潔な環境を保ちます。
運転中も、運転手は馬の様子に常に気を配ります。多くの馬運車には、運転席から馬房の様子を確認できる監視カメラが設置されています。馬が落ち着いているか、体調に変化はないかなどをチェック。車内の温度や湿度の管理も重要な仕事です。
長距離の輸送では、馬の世話をする厩務員(きゅうむいん)が同乗するケースも多く、その場合は連携して馬の安全を守ります。
運転手がどこまで関わるかは、所属する会社や輸送の内容によって変わってきます。基本的には、馬の扱いに慣れた専門の厩務員が行うことが多いです。運転手は、馬が安全に乗り降りできるよう車両をスロープ(傾斜)にぴったりつけたり、準備や片付けを補助したり、安全確認の誘導を行ったりします。
馬運車の運転手の勤務は、輸送スケジュールによって決まるため、不規則になりがちです。早朝や深夜に出発することも少なくありません。
ここではレース開催日の一例を紹介します。
馬運車の運転手になるためには資格が必要です。
馬運車の多くは、車体が大きな「大型車両」です。公道で運転するためには、「大型自動車第一種運転免許」が絶対に必要になります。
この免許を取得するには、原則として21歳以上で、普通免許などを取得してから3年以上の運転経験が必要です(一定の条件を満たせば短縮される場合もあります)。
馬運車には、トラックと馬房が一体になったタイプ(単車と呼ばれます)のほかに、運転席部分(トラクターヘッド)と馬房部分(トレーラー)が分かれる「牽引タイプ」があります。一度に多くの馬を運ぶ場合や長距離輸送ではトレーラー型が使われることがあります。
トレーラー型を運転するために必要となるのが「牽引免許」です。求人によっては「大型免許さえあればOK」という場合もありますが、牽引免許がなければ乗務できる車両が限られてしまいます。
採用のチャンスを広げたり、入社後に任される仕事の幅を広げたりするためにも、牽引免許は持っていた方が圧倒的に有利です。事実上、必須の資格と考えておくと良いでしょう。
これが最も重要です。馬は非常に臆病でデリケートな動物です。「急発進・急ブレーキ・急ハンドル」は絶対に許されません。ちょっとした揺れや衝撃でも、馬にとって大きなストレスになったり、バランスを崩して怪我をしたりする原因になります。
路面のわずかな段差やカーブの曲がり方など、交通の流れを常に先読みし、馬に負担をかけないよう非常に丁寧な運転技術が求められるのです。
乗馬経験や牧場での勤務経験が「必須」とされていない会社も多いです。しかし、馬がどのような特性(臆病、ストレスに弱い、暑さや寒さに敏感など)を持つ動物なのかを理解していることは、大きな強みになります。
輸送中に馬の様子がいつもと違う(体調不良のサインかもしれません)ことに気づけたり、積み下ろしの補助を安全に進めたりするためにも、馬への理解は大切です。
何よりも「命」を運ぶ仕事であるという強い責任感が欠かせません。また、先ほどのスケジュール例のように、早朝・深夜の勤務や長距離運転も多いため、不規則な生活リズムに対応できる体力も重要になってきます。
馬運車の運転手として働くには、どのような場所があるのでしょうか。
馬運車の運転手は、以下のような会社や団体に所属していることが多いです。
馬運車の運転経験がなくても、この仕事に就ける可能性は十分にあります。特に、大型トラックやトレーラーの運転手として実務経験が豊富な人は、採用で有利になる傾向があります。
最も重視されるのは、これまでの運転キャリアにおける「無事故・無違反」の実績です。安全意識が高く、丁寧な運転ができることが証明できれば、高く評価されます。
馬に関する専門知識や扱いの技術については、入社後に研修などでしっかりと学べる体制を整えている会社も多いので、安心してください。何よりも「馬が好き」という気持ちが、この仕事を続ける上で大きな力になるはずです。
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